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彼は私の命の恩人だったから。
大学3年も終わりの、3月の夜のこと。 私は先輩の追い出しコンパかなにかで、レストラン貸し切りの飲み会に出席していた。
数日前から風邪をこじらせ、体調が思わしくなかった。 もともと冷え性で足が冷えるのが悩みなのに、その日はたしか、ミニスカートをはいていた。
暖かい室内にいても、寒い。 足は冷たいという感覚さえ、すでにない。
だんだん、気分が悪くなってきたが、それでもニコニコ笑って、飲み食いしていた。 子供の頃から乗り物酔いが激しかった私は、気分が悪くなっても我慢するのは得意なのだ。
私はちょっと、トイレに立った。 トイレを独占しちゃイカン、イカン、などとボンヤリ思ったが、考えてみれば、私もまだ使用中なのだ。
排出行為は続いていたのだから。 遠くなる意識の中で、私の名を呼ぶ声、「大丈夫?」「開けて」という声が聞こえてくる。

開けるくらいなら、死んだほうがマシだって!まいった、私は明日の新聞に出るのだろうか。 「女子学生、トイレで死ぬ」いや、たとえベタ記事でもそんな恥ずかしい最期を迎えたら、私や成仏できないよ。
必死いで、ドア越しにお願いをした。 「オエッ」こんな姿を見せられるのは母親と彼だけだ。
母は近くにいない。 彼がきた。
私はすぐに起き上がることができない。 「開けて、どうしたの」、彼が何度も声をかけてくる。
ようやく応じて、起き上がってドアを開けた。 「ちょっと待ってください」と、彼はドアの外に向かって叫び、急いで私の身体をふき、あたりを掃除した。
「もう、開けるよ」ドアが開いて、救急隊員が飛び込んできた。

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